木暮結花さん
2022/06/30 UPDATE
木暮結花さん
1期生(2020年卒)
群馬大学出身
群馬県公立小学校(6年生担任)
良かったなと思うのは、授業をうまく
できたときと、子どもの成長を感じたとき
 公立小学校の教員になって3年目の木暮結花さん。就職した当初からコロナ禍なので、感染対策の生活も当たり前になってしまった、と笑います。子どもたちにも保護者にも、周りの先生にも、オープンマインドで正直に接する木暮さんは、コツコツと着実に教員としての経験を重ねている印象です。
- お忙しいところ、本日は有難うございます。まず近況を教えてください。
 私は、初任校の群馬県の伊勢崎市立北小学校に勤務しています。職場は歴史のある公立小学校で、学校の敷地内に市の文化財になっている鐘楼が立っていたりします。校舎も学校と言われてイメージする一棟建てではなく、民間施設のようなきれいな校舎で働かせていただいています。生徒数は400人ぐらい。以前はほとんどの学年が3クラスでしたが、今は生徒数が少なくなり、2クラスの学年が多くなっています。
 私自身は、今は6年生の担任をしています。初任の1年目に4年生をもっていて、2年目で1年生になり、3年目にもう1回6年生なので、初任のときと同じ学年の子どもたちを2回目に見ているという状態です。
 周りの先生は若い方が多いです。学年主任の先生などはベテランの方が多いですけど、それを除いた担任の先生の平均年齢が26歳ぐらいです。年齢は今も私がいちばん下なんですが、私からすると年の近い先輩が多いので、話しやすさであったり、居心地の良さであったりは、すごく感じますね。
木暮結花さん
明治6年創立の歴史ある小学校。敷地には時報鐘楼がそびえ立ち、校舎の一角に地域センターも併設されています。
- 勤務先の学校のある地域は、どのようなところですか?
 群馬県内では県庁所在地の前橋市や高崎市などに次いで、都会的な地域です。群馬県の東のほうの地域で工場が多いので、工場で働く外国にルーツのある家庭が増えていて、外国にルーツのあるお子さんがけっこう通っています。今年はクラス26人のうち、外国にルーツのある子が5人います。外国籍の子もいますし、帰化して日本国籍をとっているけどご両親が外国の方という子もいれると、8人くらいになります。
 日本語の言葉の面でいうと、1年生から日本の学校にいて問題のない6年生もいますが、日本語がまったくわからない子もいます。学校には日本語教室があって、日本語教室にも先生がいるので、その先生の時間が空いているときは教室で指導してもらい、時間がないときは担任ができることをやっている、という感じです。
 言葉の違いだけでなく、文化の違いもあります。実は来週、現地から直接来る子が一人いますが、そういう場合は、まず「日本の学校とは」からの説明になるので。
 でも、生徒の母国を通じて、外国の言葉や文化に触れられるという面もあります。日本に長く住んでいる子は学校では日本語を使い、おうちでは自分の国の言語を使うというバイリンガルの子が多いので、「じゃあこれは、ポルトガル語でなんていうの?」と聞いたりするのは面白いですね。ほかにもベトナムの子もいるし、ルーマニアもいるし、また新しくフィリピンの子が来る予定です。
- 外国にルーツのある児童は、日本人の多いクラスにすぐ馴染める?
 初任で4年生をもったとき、隣のクラスにまったく日本語を話せない、ブラジルから来たばかりの女の子がいました。日本語教室の先生とも調整がつかず、ポルトガル語で日々過ごしていて。本当に授業も言葉がほぼわからない、本人もしゃべれないのですが、周りの子がジャスチャーをしたりして頑張って伝えているのですよ。
 実は、この地域の子どもたちは外国にルーツがある子どもにも慣れています。私たち大人は外国籍とか、外国にルーツがあると思って身構えてしまいますが、子どもたちのほうがむしろ慣れていて。名前や言葉の違いにもほとんど反応しないですし、言葉がわからない子がいれば、何とか伝えてあげようとしています。
 今年6年生の担任になって、その女の子をみることになりましたが、今はすごく日本語が達者になっています。漢字も読めるし、本人も興味があるというか、たぶんお友達と話したい気持ちがあるのだと思いますが、自分が持っているタブレットやスマホの言語を「自分で日本語にしているんだー」なんて話したり。その子自身も努力しているのだと思いますが、子どもの成長スピードは速いなと思います。
木暮結花さん
6年生の国語の授業の一コマ。子どもが自ら学べるよう、問いかけの言葉一つにも気を配っているそう。
- 6年生というと難しい年頃ですが、子どもとの関係づくりで意識することは?
 私は昨年、1年生の担任でした。1年生は素直で「はーい」という感じで言うことを聞いてくれます。もちろん1年生も、私がうまく説明してあげられないとか、たいへんなことも多く、そのときは高学年の子のほうが話も通じるし、やりやすいのかなと思いました。
 でも、いざ最高学年になった子どもたちと接すると、4年生の頃より大人になっているのをすごく感じます。「先生、先生」と寄ってきていた4年生のときより、少しすました顔をして「ふーん」みたいな態度の子もいます(笑)。小賢しさというか、処世術のようなものを覚えていたりもして。「きっと6年生は子ども扱いされるのはそろそろ嫌なんだろうな」と思いつつ、関係づくりに難しさを感じることはあります。
 私も人間なので、苦手だなと思う子もいますし、内弁慶で先生に対して自分から来られないお子さんも多いです。ただ、そういう場合も私は「まずは自分から声をかけよう」と心がけています。大人ぶって少し斜に構えた子にも、「挨拶は絶対、私からする。返してもらえるまで絶対に挨拶をしよう」と思っています。
 今年度が始まってまだ1か月ですが、「おはよう」と声をかけても全然反応なし、みたいな子がいましたが、今は「おはようございます」が言葉で帰ってくるようになったので、心の中で「よしよし」と思いながら(笑)。
 授業でも、「先生が言うからやる」というのではなく、できるだけ子ども主体にと考えています。6年生は意見を言うのが恥ずかしい年齢になってきて、私が発言を促しても撃沈することがあるんですが、なるべくたくさんの子に話をしてもらえるように、私がしゃべりすぎないというのは意識しています。
- 保護者や、周囲の先生方との関係はどうですか?
 保護者は、今まさに二者面談期間中です。私は教員として経験が浅いので、逆におうちの人を頼っていこう、というスタンスでいます。特に春の二者面談は新学期が始まって1か月しか経っておらず、私も子どもたちのことを理解しきれていないところがあるので、「まだ私もわからないところが多いので、おうちでの様子とか、お母さんから見た○○さんの様子を教えていただけたらと思います」と伝えています。
 あとは人間性をすべてオープンにするようにしています。保護者に接するときでも、子どもたちと接しているときとあまり変わらず、「私もこういうところあるんですよー」と相談するような感じで。隠しごとはしないというか、正直に率直にお話しています。
 学校の先生方との関係では、私は教員になって初めてこの学校に来て、当初からお手洗いとか校内のいろいろなところで会うたびに、先輩の先生方に「最近どうですか?」と声をかけていただいていて、とてもありがたかったです。
 年齢の近い先生の間では、年下の人がお茶汲みをするといったルールも緩やかなのですが、ベテランの先生方はもっと上下関係がピシッとしたなかで私の年齢の頃を過ごされていたと思うので、そこは絶対に崩さないようにしています。
 若手もベテランの先生も心優しい方が多いので、けっこうざっくばらんに、職員室でも周りの先生にオープンにお話しています。特に同じ学年の先生には「聞いてください、今日こんなことがあって……」とか「あの子がやってくれました」とか、いつも話をしています。そうして話すことで周りの先生に助けてもらったりもしているので、なんでも包み隠さず、お話ししています。
木暮結花さん
校内初任者研修の風景。様々な年齢層の先生がメンターとなり、初任者の日々の困り感をテーマに話し合います。
- 教員としてやりがいを感じるときは、どのようなとき?
 いろいろなことがありますが、授業がうまくいったときは嬉しいですね。自分で手立てを考えて、授業で自分の考える狙いまで持っていけたときには、達成感はすごくあります。
 例としては昨年行った道徳の授業が印象に残っています。教育委員会の方が来校するので教材研究にもかなり時間をかけ、指導法も何回も練り直して準備をしました。どうなるかなと当日まで心配だったんですが、子どもたちは私が想定していた以上の道徳観を見せてくれて、「私のやれるだけのことはすべてやりました」と思える授業になりました。そういうところまで行けることは、それほどないのですが(笑)。
 教員として子どもとの関わりや学級経営など、うまくいかなくて落ち込むこともたくさんあるのですが、子どもが少しでも成長を見せてくれたりすると、マイナスな気持ちが吹き飛びます。特に昨年は1年生の担任で、1年生って1年の中でいちばん成長がみられる学年なので、名札もつけられなかったあの子たちが……みたいな。
 また初任のときは、クラスに学校にまったく来られないわけではないけど、しぶりがひどい、不登校傾向の子がいました。朝、学校には来られるけど教室には行けないというのが1、2学期頃まで続いていて。私は初任で、初めてだったのでどうしてあげたらいいかわからなかったのですが、休み時間のたびにその子に会いに行って何気ない話をしたり、朝は私が教室に行ってから職員室に登校してくるので、手紙を用意したりしていました。
 そうしたら、あるときから「給食、行ってみようかな」とか、「○○の授業だったら行ってみようかな」という日が増え、3学期になる頃にはまるで前からいたかのように普通に教室にいるように。6年生になった今でも、不登校の傾向は見せずに学校に来られるようになっている子どもを見ると、やりがいを感じ、良かったなと思います。
- 教育現場で突き当たった困難や、苦労していることは?
 そうですね、困難はたくさんあるんですけど、自分の切り替えが早すぎて忘れてしまうことが多いかも(笑)。
 以前に奨学生向けの教職座談会でもお話したように、学校現場の仕事は、学生時代に想像した以上に事務作業が多いという印象はあります。小学校は指導する教科が多いですが、うちの学校では今年、6年生は教科担任制を始めています。私は専門の国語に集中できるので負担が減るかな、国語の授業が多くて楽しそうだなと思っていましたが、私が担当する3クラスのノート等をすべて集めると80人分くらいになります。子どもたちの考えを詳しく知りたいと思ってノートやプリントを提出してもらっていますが、人数が多い分、丁寧に見る時間は減ってしまう、というジレンマはあります。
 それと、今まさに進行形で、先ほどとは違う不登校傾向の子がいます。家庭環境が不安定で4年生の終わり頃から不登校になっていました。保護者とはおかげさまでよい関係でしたが、そのまま年度が替わり、昨年は担任が変わってほとんど不登校の状態に。今年6年でクラスが決まったときにその子がいたので、また新たに関わり方を変えながら、よりいい関係を作っていきたいなと思っています。
木暮結花さん
インタビュー中の木暮さん。勤務後の疲れも見せず、終始穏やかな優しい笑顔で教員生活を語ってくれました。
- お休みの過ごし方、OBOGに聞きたいことをお願いします。
 本当にブラックだと思われちゃうかもしれないですが、休みの日も学校に行ってしまうことがけっこうあります。午前中だけとか、時間を決めてですが。
 金曜日になると嬉しくなってしまって、早く帰りたくなって仕事が残っていても帰ったりしてしまうので。私は長時間頑張るよりも、回数が多くても少しずつ働きたいというタイプのようで、同じ残業4時間でも、金曜と土曜で2時間ずつ分割して行こうかな、という感じです。集中力とやる気の問題かもしれませんが。
 仕事のない日は、外出すると疲れてしまうので家にいることが多いですね。ドラマを見るのが結構好きなので、撮りためているドラマを見たり、漫画を読んだりしています。あとは一人暮らしなので、お料理をしたり。何も考えずにいられるようなことをしているのが気分転換になります。
 外出するときは、意を決してという感じで、フラワーパークみたいなところにお花を見に行ったりすることもときどきあります。
 OBOGとは、おそらく大学3年頃のスプリングキャンプであったのが最後かな? 同期で大学院に進学する子も多かったので、今年から働き始めている同期も多いと思います。そういう働き始めたOBOGの方たちと、初任者研修ではないですが、現場で働く教員同士として「今、教室で困っている子いる?」とか「授業どうしてる?」とか、教員のやりがいとか、いろいろと話をしてみたいなと思いますね。

(2022年5月13日の取材をもとに事務局が編集しました。)
編 集 後 記
本気、根気、やる気
「真摯に向き合い、相手のペースに合せ、気長にじっくりと、できるまで導き続ける」
 いやー、なんとマジな人なんだろう!取材前半でそう思った。仕事に、同僚に、子どもに、木暮さんはいつもマジである。だからといって昔の先生にありがちな「私の言うとおりにしなさい」的押しつけがない。ふんわりと、やさしく、丁寧に子どものペースと成長に合わせて、できるまで丹念に教えつつ、その子にやる気を沸かせ、成果に導く。
 ずーっとその子たちを思いやり、考えつづけているからそんなことが出来るのだろう。スポーツの世界で凄い監督と言われる人には24時間365日、選手全員のことを思い、考え夢見ることを当たり前のように語る方が多い。そして意外に聴き上手で褒め上手であるそうだ。木暮結花さんは、子どもが自ら育ち花咲かせることに導く名教員になると思う。
そこで、とくに教職にある皆さんにお願い
 外国ルーツの子どもはどんどん増えて行く傾向にあります。受け持ったことのある方はどんな困りごとや良かったことがあったかなどなどのエピソードに加えて、ご自身の子どもとの関わり方を、経験のない方は、こんなときどうしたらという質問や不安を送ってください。
木暮さんにも色々質問してみましょう
募集中
学びをより広く
深いものにするために
取材を受けてくれたOBOG教員たちは、一生懸命自己開示してくれています。
1.彼らに感想やメッセージを送ってください
2.記事中の彼らの質問になるべく答えてください
3.編集後記の「皆さんへの質問」に、なるべく答えてください
メールにて、hakuho-f-obog@ddcontact.jp (教職育成奨学金ネットワーク事務局)までお送りください。
皆さんからいただいた感想やエール、質問への応答は、多様な知見のストックとなります。
「1期生 小学校教員○年目」という紹介にて、追って掲載いたします。
このコンテンツは、奨学生のOBOG限定です(現役奨学生や関係者向けには別途編集したものを後日提供予定)。
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