青木七海さん
2023/05/18 UPDATE
青木七海さん
1期生(2021年卒)
文教大学出身
埼玉県公立小学校(5年担任)

毎日変化が多くて、おもしろい!
子どもと一緒に成長していきたい
 学生時代から子どもの教育に情熱をもち、海外研修やフィールドワークにも積極的に取り組んでいた青木七海さん。埼玉県の小学校に勤務している今も「日々仕事に追われている」といいつつ、子どもとともに学ぶ教員という仕事を心から楽しんでいるようです。率直で飾らず、パワフル。そんな青木さんの日常を教えてもらいました。
- 今日は学校から、ありがとうございます。近況を教えてください。
 2021年4月に埼玉県の公立小学校に就職し、現在2年目です。昨年小学4年生を担任し、今年は5年生の担任をしています。教科は家庭科、書写、音楽以外全ての教科を担当しています。学校があるのは埼玉県上尾市ですが、すぐ隣がさいたま市で、子どもたちの生活圏はさいたま市にあります。児童数は400人弱で1、2年生は3クラス、他の学年は2クラスの小さめの学校です。
 今年担任している5年生は、昨年からみている学年です。昨年に比べるとだいぶ落ち着いた印象です。 ちょっとまだ騒がしいところはありますが、いい意味ではすごく活気があって、クラスの学級会などでは活発に意見を出したり、楽しんだりする姿も見られます。擦れてないというかとても素直な子どもたちで、係がレクリエーションを企画するとみんなで外に出て増やし鬼とかドロケイ、ドッジボールなどの活動を楽しんでいます。
 全体としては真面目で穏やかな子が多く、保護者も協力的な 雰囲気です。ただ規模の小さい学校で教員数も少ないうえ、学年が2クラスなので、学年の担任2人でどちらかが分担しなければいけない学年の仕事、学校の仕事がたくさんあって、すごく日々追われているという感じです。
青木七海さん
青木さんが力を注いだのが学級活動。クラスの一角に学級会で話し合ったことをわかりやすく掲示しています。
- 授業や児童との関係づくりはどのように?
 授業中は、私は「規律を大事にしないといけない」という思いがあって結構強く指導しているつもりなんですが、昨年は子どもに「全然怖くない」と言われました(笑)。私はやることが遅いし、いろいろ忘れたりもするので、子どもたちから結構おっちょこちょいというイメージをもたれているのかなと思います。
 勤務校はベテランの先生方や中堅の方が多い学校で、私のすぐ上は30代の先生なんです。教員生活が8年目、9年目の方の次が私になるので、「青木先生は若いからさあ、しょうがないよね」と子どもが話していたと保護者から聞いたこともあります。初年度に子どもからの手紙で「1年目とは思えないほどしっかりしている」と、なぜか上から目線で書かれていたことも(笑)。実際、私が子どもたちに助けてもらっていることもあるので、失敗や忘れ物をしたら「ごめんね、忘れちゃった」と率直に話しています。
 子どもとの関係づくりでは、クラスで自主学習やワークをしているので、それにコメントを入れたりしています。自主学習を教室に掲示したり、頑張った子たちを認めてあげられるようにしたいなと思っています。
 あとは、休み時間は外に出て子どもたちと一緒に遊んでいます。室内の遊びばかりになっているときは、自分から外に呼んだりもします。ただ、遊びでも活動でもできるだけ子どもから「何をしたい」という案が出るように、「どうしようか」みたいな感じでつぶやいて、子どもから出てきた活動をするように意識しています。
 できる限り多くの子どもと話すようにしているつもりですが、やっぱり偏りは出てしまいますね。クラスのなかには教室を飛び出して校内を歩き回ったり、ほとんど一斉の指示が通らないような児童もいます。朝にその子専用の時間割を一緒に確認するところからスタートするので、1学期は対応にかなり時間をとられてしまい、他の子になかなか目が向かなかったところがあります。そこが自分でも課題かなと思っています。
青木七海さん
「学級の歩みともに児童が楽しい日々を振り返ることができる掲示を作成。自主学習は教科別です」(青木さん)
- 保護者対応や、職員同士の関係は?
 私は今の学年しか知りませんが、保護者はいい意味で任せてくれていてクレームのようなものはほとんどないですね。ただ連絡帳などで家庭から連絡を受けたときは、まめに電話をしています。学校でけがをしたときや保護者に聞きたいことがあるときも、連絡帳に一言書いて済ませることはせず、私はあえて電話をして「最近こんなことをやっています」「こんなことを頑張っています」と伝えています。あと電話では、連絡帳に文字で残したくないこと、子どもにもうちょっと頑張らせたいところなどを少し伝えることもあります。
 職員同士の関係は、すごく恵まれていると思います。特に組んでいる学年の先生は、昨年度も今年度もいろいろなところで尊敬できて、自分とは全然違うタイプの先生と組ませてもらっているので、とても有難いです。
 初任の昨年、組んでいた先生はすごく穏やかな方で、でも子どもをのせたり、やる気にしたりするのがすごく上手な方でした。ノートをちゃんと書けないようなときも「『できるようになるための作戦を一緒に考えよう』と声をかけてあげて」と、支援の方法を教えてもらいました。学級会のやり方なども、本当にいちから教えてもらった感じです。その先生がレクリエーションなどの活動も、できるだけ子どもにやらせたり、言わせたり、考えさせたりしようという方針だったので、私も今自分のクラスでそうしたいと思ってやっています。
 今年は一番年が近い30代の先生と組んでいるんですが、その先生は特に算数の指導力がすごい方です。自分は算数が苦手で、5年生の算数は教科書を見ながらやらないとわからなくて苦手意識があったのですが、算数の教え方や、なぜそうなるのかという考え方も教えてくださいます。1年目は教育の姿勢みたいなところを学ばせていただいて、今年は授業の具体的なやり方、手法のところを同学年の先生から教えてもらっています。
青木七海さん
青木さんがスケジュール管理に使用している手帳(左)と2学期に行った係文化祭のプログラム(右)。「手帳が太くなってしまい、毎年模索中。おすすめがあったら教えてください」
- 教員としてやりがいを感じるのは、どんなとき?
 私はふだんから子どもたちに「自分たちでいいと思ったことはどんどんやって」と話しています。今の子どもたちは、大人の指示がないことをやったら怒られると思っている子が多いので、「指示がなくても、そのときの状況に合わせて動けるようになってほしい」と思い、日頃からそう伝えています。だから、子どもが担任のいないときにも子どもたちだけで何とかしようと頑張っているとき、自分たちで考えて動けたときには、「日頃の指導を感じ取ってくれているんだな」と嬉しくなります。
 先日も、その日の朝は体育館に学年で集まる予定で、私が朝までに黒板に「朝何時何分に教室を出て、体育館に静かに並んでね」と書いておかなければいけないのに忘れていました。当日に職員室で思い出し、「そういえば今日は体育館に集まるんだった!」「もうやばい、あと1分後に始まっちゃう!」と焦って体育館を見ると、クラスの子たちがもう体育館に並んでいて「え、どうしたの?」と聞くと、「なんか1組が並んでいたので、そうかなと思って行きました」との返事。子どもたちに助けてもらって悪いなとは思いましたが、とても頼もしく思いました。
 あと、やりがいといえるかどうかわかりませんが、変化ばかりの毎日で教員という仕事はおもしろいと思います。就職してこの1年半で「やめたい」と思ったことはなく、毎日が純粋に楽しいという気持ちで学校に来ています。理科で振り子の実験をしたときも、「振り子の速さってどうしたら変わると思う?」と話していると、子どもから「ブランコに乗っているとき、子どもより大人が乗ったほうが速いから、重さで変わるんじゃないか」と意見が出て、「おもしろい、自分はそういう発想は考えつかなかったな」と思いました。それに対して「いや、それはブランコのこぎ方の問題で、重さは関係ないだろう」みたいな意見もあって盛り上がっていました。
 私自身はあんまり勉強が得意じゃないんですが、小学校では算数でも公式の丸暗記ではなく、なぜその公式になるのかをしっかり学びます。なぜ円の面積は半径×半径×3.14なのかとか、自分で教材研究をしてその理屈を知ると「すごい、なるほどな」と思います。道徳なども、勉強を教える私のほうの道徳心が育ったりして(笑)、子どもに教えながら、自分も成長できるというのが教員の良さだと感じています。
 あと支援が必要な児童も、 1学期に比べると教室を飛び出すことは少なくなり、そういうところでもすごく成長を感じます。自分が成長させたとは思いませんが、ずっと同じでないところが子どもはおもしろいです。毎日業務に追われてはいますが、でも嫌じゃないというか、結構忙しくしているほうが自分に合っているかなとも思います。
- 今、苦労していること、悩みは?
 先ほどもお話しましたが、小規模な学校なので1年目から校務分掌の仕事が回ってきて、その主任もやるので、大変ですね。具体的には、今年は安全主任として避難訓練の企画提案、一斉下校や交通安全教室の提案などをしています。それから、学校課題研究の国語部の部長もさせてもらっています。あとはキャリア教育主任と教科の国語主任もしています。
 小さい学校だと、教員1人が3つ4つの校務分掌を担当するのはふつうかなと思います。大きい学校だと2つぐらいで済んだり、1年目2年目はほとんどやらずに済むこともあるようです。教員が多ければ多いほど、担当業務の意見のすり合わせも難しくなるので、単に小規模校だから大変というわけではないと思いますが、回ってくる仕事の量はどうしても増えてしまいます。教科の担当も、学年の担任2人のどちらかが入らないといけないし、それ以外にも体育部の一員でもあるので、運動会の準備でライン引きをするとか、競技のルールを見てくださいと言われて見るとか、ほとんど校務分掌の仕事をしている感覚です。
 それと、80時間の残業を超えないように厳しくいわれているため、そのなかで仕事をやり切るのが結構大変です。仕事が終わらなくても私は家では絶対に仕事をしたくないので、土日に学校に来てやることもあります。でも土日を含めても、学校にいる時間で教材研究にまでほとんど行き着かないので、教材研究だけは家でやることもあります。
青木七海さん
職員室でパソコンに向かう青木さん。「私は段取りが悪いので、事務作業が苦手で毎日追われています」
- 今後に取り組んでいきたいことは?
 私は国語が好きなので、国語のサークルとか勉強会に参加してみたいです。今は、学年で組んでいる先生に算数の勉強会に連れていってもらっています。算数の場合、埼玉県がやっている勉強会が母体で、さらに各市内でいくつかのブロックに分かれていて、平日の7時頃から公民館みたいな場所を取ってやっています。その一つに私も本当におまけみたいな感じで入れてもらっています。
 国語でもそういう勉強会があると聞いているので、機会があれば行きたいです。なかなか自分1人では行きにくく、そういう会を知っている方に連れていってもらうのが近道なので、チャンスがあればいずれ行ってみたいです。また今は学級会、学級活動にも興味があるので、そちらの勉強もしたいと思っています。今の6年生の先生に学級活動がすごく上手な方がいるので、今はその先生から教えてもらっています。
 それと、事務作業に追われて授業の準備がおざなりになってしまっているところがあるのでしっかり準備したいです。5年生は全学年でも一番授業が多いといわれていて、毎日授業が6時間あるので、授業の準備をしっかりして、もう少し自分の中で授業についての引き出し、ストックを増やしていきたいです。
- 気分転換のしかた、OBOGに伝えたいことは?
 小学校2年で始めたスノーボードが好きなため、冬の楽しみはスノーボードです。昨シーズン中は越後湯沢に6回くらい行きました。越後湯沢だと新幹線で1時間少しぐらいなので、意外に気軽に行けます。あとは毎日漫画の無料アプリで漫画を読むこと。チケット制で1日10話くらいしか読めないので没頭して読み過ぎてしまうこともなく、ほどよく毎日読んでいます。
 ほかに友達と遊んだり、飲みに行ったりするのも好きなので、土日のどちらかは学校、どちらかは遊ぶという過ごし方です。友達は中学や高校、大学時代の友人もいますし、同じ大学で奨学生OBOGの同期の友人とも定期的に会っています。
 奨学生OBOGに今すごく聞きたいのは、服装についてです。1年目はシャツにスーツの就活スタイルで通勤していましたが、いつまでもこれでは恥ずかしいなと思い、皆さんの通勤服はどういう格好で、どこで買っているのか知りたいです。また学校の卒業式、入学式、音楽会などで着るかっちりとした服装も程よいものが見つからず、おすすめのお店があれば教えてほしいです!
 財団に望むサポートとしては、今、外国語の授業があるので、外国の人ともっとコミュニケーションをとれるような機会を作ってもらえたら有難いなと思いました。外国語の教え方というより、私たち教員が外国の方と直接お話ししたり、ゲームをしたり、そういう場があったら嬉しいです。あとは子どもたちのキャリア教育などで博報堂教育財団の方に講演していただいたり、出前授業みたいな感じで教科と結びつけて話をしてもらえたりしたら、すごく心強いなとも思います。財団の方々がいつも私たちのためにいろいろな機会を作ってくださるので、それに甘えてお伝えしてみました(笑)。
青木七海さん
大学のときの同期の友人とスノボに行ったときの1枚(青いウェアが青木さん)。

(2022年12月2日の取材をもとに事務局が編集しました。)
編 集 後 記
心技体全開
(青木さんと会い、心技体揃っている人を探すことすら大変なのに、常時、心技体同時発動している人がいることを知った。)
 4年ほど前に、「子どもたち自らが考えて進める授業」を推進する小学校に、奨学生を3人連れ、授業オブザーブと取材に行く機会があった。その奨学生の中に青木七海さんがいた。青木さんは、子どもワークショップの様子を、食い入るような視線かつ楽しそうな笑顔で観察記録を取っていた。ここまでは奨学生一般の光景として受け止めていた。
 授業が終わって、主任教諭への取材が始まりお礼の挨拶。それが青木ワールド始まりの合図だった。教諭からプロジェクトの経緯、苦労話、現在の活動の特長などの説明が終わるやいなや、青木さんの質問が始まる。「どうやったら子どもが授業全部を考えられるのか?凄く難しいと思うのですが・・・」といった切り出し。(満面の笑顔と気遣う言葉遣いにも感心)
 教諭から具体的な話が返ってくる。(ウーム、青木さんの相槌うなずきが教諭とシンクロしていてリズム良い)そしてそれを受けて間髪入れずに次の質問。(早い。多少早とちりがあった模様だが、そこは満面の笑顔で帳消し)驚いたのは、このスピードある複数のやりとりの間、ずっと青木さんは手を動かしてメモをとっていたこと。そこから質問をしているのだ。
 聴く、質問する、対話する、メモする、整理する。この一連の動作が綺麗に続く。他の2人の質疑応答を除いても40分くらい費やしたのではないだろうか。まるで中国拳法の達人が組手をしながら論文を書いているような光景を想起してしまった。
 取材中「子どもが『先生1年目なのによく頑張っている』と話した」という説明があった。
 頭も、心臓も、手足も、全身フル稼働で、手を抜くなど微塵もなく子どもに向き合い、授業を行う、その他の業務も然り。そして一貫して笑顔と気遣いを忘れない。だから怖さなど微塵もない。こんな先生には、老いも若きもみな「頑張れー」と声援を送りたくなるのではないだろうか。先の子どもの言葉は、心技体全開を続ける唯一無二の若い先生に対する驚きと最大の賛辞ではないかと思う。
 心技体全開を続けることは、成長スピードに繋がり、自ずと輝く道はいくつも開けると思う。
 ただし、たまに心技体全休の日をつくって欲しいと思った。
そこで、とくに教職にある皆さんにお願い
 皆さんもまた、スタイルは違えども、子ども・生徒のことを日々思い、考え真摯に向き合っていると思います。
 ところが、教員には公務員としての仕事も負担が大きくて、「事務仕事と校務分掌何とかしてくれー」という話をよく耳にします。中には意義をそれなりに感じて、楽しんでいる方も見受けられます。
 個人情報として取り扱いは厳重に注意いたしますので、皆さんが「事務や校務分掌」をどう思っているのかを書いて送ってください。宜しくお願いいたします。
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募集中
学びをより広く
深いものにするために
取材を受けてくれたOBOG教員たちは、一生懸命自己開示してくれています。
編集後記中の「記入フォームはこちら」より入って
1.お読みになった感想をお書きください。
2.彼らにメッセージをお送りください。
3.編集後記の皆さんへの問いかけになるべくお応えください。
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