森田彩花さん
2023/02/13 UPDATE
森田彩花さん
1期生(2020年卒)
明星大学出身
埼玉県川越市小学校(1年担任)

授業はリズムやテンポを重視。
学校図書館の活用も力を注いでいます
 勤務先の小学校の担任クラスからインタビューに参加してくれたのが森田彩花さんです。つい残業が多くなってしまうと笑いつつ、今の教員生活を語る口調はとにかく明るくパワフル。授業も児童との関わりも校務分掌も、森田さん自身が楽しみながら全力で取り組んでいることが伝わってきました。
- お久しぶりです、お元気そうですね。近況を教えてください。
 令和2年度採用で、埼玉県川越市の小学校に勤務しています。初年度に2年生、2年目に3年生を担任し、今年は1年生担任の担任をしています。
 勤務校は今年150周年です。学校があるのはさいたま市にも近いエリアで、児童数1000人を超える大規模校です。校区が広いので毎日片道1時間歩いて登校する児童もいて、真夏などは本当に汗だくで、真っ赤になりながら学校に通ってくれています。教員の数も多く60名ほどいますが、臨時的任用教員の先生も多く、毎年半数くらいが入れ替わります。初任のときには先生方の名前を覚えるのが大変でしたね。
 今年は全学年が5クラスずつあります。今年私が担任している1年生は150人ちょっとで1学級30~31人ですが、昨年と一昨年にもっていた学年は194人もいて、2年生で6クラスだったのが3年生から5クラスになって、1クラス39人とぎゅうぎゅう詰めな感じでした。3年生になると教科も増えますし、私自身も社会科や理科、総合の授業も初めてだったので「子どもたちと一緒に自分も学ぼう」という感じでした(笑)。
 今年は1年生の担任になって、教材研究はゆとりをもてるようになりました。でも、私以外の他の1年生の先生方は全員ベテランぞろいです。再任用の先生と20年研を終えた先生が2人、もう1人は臨時的任用の期間を入れて10年弱という先生で、皆さんはわかっているけれど、私がわからないことが多いです。再任用の先生がすごく丁寧に教材研究をされていて、そういうベテランの先生方に学びながらやっています。
- 子どもたちとの関わりは? 授業はどんな雰囲気?
 子どもたちとは距離が近い感じですね。クラスの児童とは1日1回は話すことを意識していて、話をできなくても全員に声をかけるようにしています。まず朝に全員の健康観察簿にハンコを押すので、そこで話します。それから何か小さい変化があれば「あれ何か変わったね、髪切った?」と必ず声をかけます。
 授業ではテンポよく、勢いというかリズムを大事にしています。たとえば、道徳の授業などで役割演技をすることがあります。登場人物の一人が悪いことをして「そばにいた人は止められなかったのか」「ダメなことはダメと言うのが友達では?」と考えさせたりするときに、子どもたちが各登場人物の役になって意見を言い合ったりします。そういう役割演技のときに私は映画撮影の合図に使うカチンコを持っていき、「よーい、アクション!」「カット」とやっています。代表のチームに教室の前で演技をやってもらったりすると盛り上がります。
 それと子どもはそれぞれ得意教科・不得意教科があります。得意教科が限られていて、ここぞというときにだけ手を挙げてくる子もいるので、そういうときはその子に率先して話してもらうように配慮します。帰りの支度も前は遅かったのですが、5時間目の授業後にテンポのいい音楽の「天国と地獄」を流して、その間に片付けをしたりしました。「○○くんが早い、おっと△△さんが巻き返してきた」と私が実況して、授業では目立たないような子もそこで名前を挙げて「あなたのことを見ているよ」と間接的に伝えています。
 10月になって子どもたちもだいぶ慣れてきて、学習面も生活面も頑張ってくれています。私があまり手をかけなくても給食の準備ができるようになったりして、4月には何もわからなかった1年生が「あー、こんなにできるようになったんだ」と驚きます。
- 職員同士、保護者との関係はどうですか?
 職員同士の関係では、毎日お会いする先生方に明るく挨拶をしています。私は学生時代陸上部でしたし、挨拶は当たり前と思っていますが、私が挨拶すると他の先生が「気持ちがいいね」「本当にいつも明るいね」と声かけてくださるので、ありがたいなと思います。
 私の学年はベテランの先生方ばかりなので、困ったときはまず相談するようにしています。周りの先生方は先が見える方ばかりなので「これを準備しておかなきゃね」とお話があって、お尻を叩かれつつやっている時期もあれば、余裕があるときは自分から「こんな教材を作ってみたんですけどどうですか」と聞いたりすることもあります。
 少し難しいなと思うのは、5クラス全体の足並みを揃えること。通勤の事情などで担任が5人揃って学年会をできないときもあるので、私は欠席した先生に会議の内容や配布物を伝えたりもします。それから私は子どもにやらせてみて、チャレンジさせて学ばせていきたいタイプなんです。失敗も学びというか、「できなくて当たり前だし、できるようになるのが楽しいんだよね」といつも子どもに話しています。だから丁寧にやりすぎて、絶対に成功するであろう道を敷き続けるのはちょっと違うのではと、モヤッとするときはあります。でも低学年のうちにしっかり成功体験を経験させたいという考え方の先生もいて、それも勉強になっています。
 保護者に対しては「傾聴」の姿勢を大切にしています。1年生ですし、登下校時間が長い子ほどトラブルも増えるので、そういうお話を聞くことが多いですね。ほかにも学年には、話を聞いてほしいタイプの保護者が何人かいます。私に対して嫌なことがあるというよりお子さんが心配で、学習相談を月1回~隔月1回ぐらいで希望する方がいるので、私は面談で全部吐き出してもらってすっきりして帰れるようにと考えています。
 実はこのインタビューの前にも保護者からお電話があり、4時半頃から45分間電話でお話しました。でも職員間でも賛否両論があります。私は保護者が話してくれているのを「お母さん、そろそろ時間なんで」と遮るのは違うと思うのですが、そうすることでその時間にやるはずだった丸つけや評価など、他の仕事ができなくなるので、少し上の先輩には「それってどうなの?」と言われたことも。そのバランスは難しいですね。
- やりがいを感じるのは、どんなとき?
 子どもが「学校が楽しい」「勉強がおもしろい」と言ってくれるときや、児童の成長を実感できたときには、やりがいを感じます。本校では学期ごとに教員の通知表を書かせています。「学校が楽しい」という項目はほとんどの子が丸をつけてくれていますが、学校が楽しいと思える基本は勉強だと思うので、授業で子どもを置いてきぼりにしないようにと考えています。算数なら授業中に丸つけまでをして「できた、やった」と感じられる日々の積み重ねが「楽しい」になるのかなと思います。
 授業で子どもにここがちょっと苦手だなというところがあれば、根気強く個別に指導をしたりもします。算数や計算で、机間指導をしていてちょっとつまずいているなと気づいたら一緒に考えます。あと作文が苦手な子も多いです。まだひらがなの文字と音が繋がってないお子さんもいますし、2学期からはカタカナと漢字も同時に進んでいくので、ひらがなシートや漢字カードを使って、一緒に確認しながら粘り強く進めています。
 私自身のことでいえば、教員になって毎年公の場で授業をする機会をいただいています。初任時は川越市の初任者代表で授業をして、昨年は2年次研で学年を巻き込んで研究授業をしました。今年は特別活動で学校研究をするので、指導者を招いて低学年の代表として授業をする予定です。若手だから研究授業をさせていただけるんだなと思いつつ、自分の日頃の指導や今までやってきたことの積み重ねで、そういう貴重な機会をいただけるのかなと思って、自分でもそれを糧にしている感じです。
- 教員になって直面している苦労や悩みは?
 働き方改革が進んできていますが、私は残業をしてしまうことが多くて、どうしたらいいかなと思っています。笑い話なんですけど、私は初任者のときに校内で「残業クイーン」と呼ばれていたんです(笑)。本当にひどいときは月100時間超えていたりして。
 もともと学校全体としても残業が多かったのですが、今は水曜日だけは6時に絶対閉庁になり、ありがたいと思っています。でも私自身はその他の日に残業したり、土日に出勤したりというのがまだ結構ありますね。残業が続けばもちろん疲れますが、寝ればすっきりするタイプなので、自慢ではないですが、初任から今まで体調不良で休んだことは一度もないですね。
 それから悩みとしては、学級に3人中国籍の児童がいて、その対応が難しく言葉の壁を感じます。3人の生活背景や日本語力はさまざまで、そのうち1人はほとんど日本語が話せないので、1学期には友達間のトラブルもありました。日本語指導の先生が週に1回1時間指導をしていますが、私にも何かできることがないかなと思い、日本語がわからないと困る最低限のことは「じゅぎょうはじめ → しゃん くう」など、パワーポイントで中国語と日本語の対応カードのようなものを作って使用しています。今はだいぶ慣れてきて、ふとしたときにも日本語が出るようになっています。私が国語の授業で、教材の世界観を表して馬の帽子をかぶってやったことがあって、それを見て中国籍の子が「何それ!」「何やってんの?」と片言の日本語で話してくれて、嬉しくなりました。地域としても外国にルーツのある児童は増加傾向にあるので、私も自分の適応能力を高めるつもりで、少しずつチャレンジしています。
- 今後に取り組んでみたいことは?
 学校図書館について、より学びたいです。私は司書教諭をもっていて、今年は校務分掌でも学校図書館主任を務めています。本校には「夢の国」という名前のきれいな図書館があります。私は主任として、配架や本の貸し出し日程を決めるほか、読書月間のイベントを委員会で考えたりもします。今年は子どもたちに本に親しんでもらうため、先生方全員におすすめの本を持って写真を撮ってもらい、図書館前に掲示しています。
 また今年度からご縁があって埼玉県学校図書館協議会の役員として所属し、図書・図書館を有効活用した授業の研究や、読書感想文コンクールの審査をしています。この経験を活かして自分自身の授業改善にも努めたいと思っています。絵本の力はすごく奥が深いですし、低学年のときにいかに図書に触れるかによって語彙力や読解力も大きく変わってくるなと実感しているので、もっと勉強をしたいです。
 それと、ゆくゆくは特別支援教育に携わってみたい気持ちもあります。大学時代は特別支援教育専攻で学んでいたので、認定講習を受けながら免許の領域を増やし、特別支援学校や特別支援学級でも勤務をしてみたいです。
 私の出身の明星大学は、2年次のインターンシップで小学校と特別支援学校に行けるんです。そのとき私は特別支援学校に就職するつもりだったので、大学時代は小学校に行ってみようと思って行ったんです。そこで教員が、学習が遅れている児童に対し「この子は来年から支援学級に行くから、座っていてくれればいいの」と発言をしていて……。それに衝撃を受けて、私はせっかく特別支援を学んだのだから、ハンディがある子や特性が強い子にも学校が楽しいとか、勉強もじっくり進めたらできたといか、そういう経験をしてほしいと思って小学校へ就職をする道を選びました。
 それでも、やっぱり特別支援の魅力もあるので、しばらくは小学校で頑張って「小学校でやりつくした」というタイミングで、特別支援のほうへ行けたらありがたいです。
森田彩花さん
(上)図書主任の森田さんは読書月間に「先生方のおすすめの本」を紹介する企画を考え、本を持った全職員の写真を掲示しました。(下)「ゆめのくに」は子どもも大好きな図書館の名称。「休み時間も憩いの場になっています」
- 気分転換のしかたを教えてください。
 趣味は映画鑑賞です。自宅の近くに映画館があるので、好きな映画をやっているときや観たい映画があるときは映画館にも行くんですが、映画館でポップコーンだけテイクアウトして、家で見ることも多いです。HuluとかNetflixとかの映画配信サイトに登録して、プロジェクターで部屋の壁に投影して観ています。照明と一体化しているプロジェクターがあって、10万円ぐらいするんですけどボーナスで買いました。家でダラダラ、もぐもぐしながら観るのがすごく好きですね。
 あと冬の間はスノーボードにも行きます。大学3年から始めて4年目くらいになりますが、群馬に行ったり、ちょっと遠出をして新潟まで行ったりします。昨年はあんまり行けなくて5回ぐらいでした。5回というのが多いのか少ないのか、よくわからないですが(笑)。
 最後に奨学生に伝えたのは、学び続ける姿勢をもって欲しいということです。私自身も学び続けたいと思っています。OBOGの皆さんには、先ほども話に上がった「残業を減らすコツ」があれば、ぜひお聞きしたいですね。
森田彩花さん
森田さんの趣味の一つがスノーボード 。「冬のシーズンは友人たちと身体を動かしてリフレッシュしています」

(2022年10月25日の取材をもとに事務局が編集しました。)
編 集 後 記
子どもの世界観、そのままキープ
(子どもと同じ質量の見方・捉え方・感じ方をするから、子どもも大人も、喜びうなずく)
 まるで絵本の中からとびだしてきて、子どもも教員も保護者も、その絵本の世界に連れて行かれてしまい、1配役にさせてしまう。森田さんのお話しをよく聴き、説明の仕方、抑揚、声の調子からイメージした世界観はこのようなパステル調の楽園風景だった。
 担任のお仕事、子どもとの関わり・指導に加えて図書館主任、県の図書館協議会役員、読書感想文コンクールの審査員、公開授業など、評価を得て鬼のごとき忙しさの渦にいる。
 しかしそれぞれの説明をする森田さんは、まるで「ねえねえ、おもしろいんだよーこのおしごと。それとねえ・・・」と子どもが語っているような雰囲気で、しかも子ども生き写しの活きた笑顔で語るのだ。
 大人になるにつれ、社会性を要求される中、理性ばかりが肥えてしまい、頭も「正しい」「すべき」に縛られる。やがて、子どものとき誰もが持っていた“心から体ごと楽しむ力”は消えて行く。そして、この力は創造力に直結する。答えの見えないこれからの社会、圧倒的に求められる力だと思う。
 心から楽しむ力を沸き起こせる。だから森田さんは子どもから職場の先生、保護者、事業の関係者に至るまでの幅広い関係者のすべてから認められているのだと思う。
 今持つ、ものの見方・捉え方・感じ方を信じて続け、森田さんワールドの中で、子どもを思い切り楽しく育んで行って欲しいと思う。
そこで、とくに教職にある皆さんにお願い
子ども・生徒がおなかの底から笑っていているシーン
あなたの体験、あなたの児童・生徒のシーン
そのときのあなたの思い蘇らせて送ってください。
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募集中
学びをより広く
深いものにするために
取材を受けてくれたOBOG教員たちは、一生懸命自己開示してくれています。
編集後記中の記入フォームはこちらより入って
1.お読みになった感想をお書きください。
2.彼らにメッセージをお送りください。
3.編集後記の皆さんへの問いかけになるべくお応えください。
このコンテンツは、奨学生のOBOG限定です(現役奨学生や関係者向けには別途編集したものを後日提供予定)。
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